有明先生と瑞穂さん
布津はもっていた食べかけのパンを瑞穂に差し出す。

「食う?」

「いらない」

「食えって」

「布津部活終わったらお腹すくでしょ」


ゴチャゴチャ言う瑞穂がうっとおしくて無理矢理口に押し込めるとブツブツ言いながら口に入ったパンを必死で食べた。



「バカ瑞穂」

「ああ・・・久々聞いたわ」


パンを飲み込んだ後、手の甲で口をぬぐいながら笑う。



「わかってるよ・・・。
有明先生のこと信じてるって言いながら信じきれてない。

結局疑って、先生のこと傷つけて――・・・


でもどうしようもないんだもん。

頭ではわかってるけどどうしようも」

「そうじゃねえよ」


もう一度瑞穂の口にパンを押し込み黙らせる。

「ムゴッ!」とか言いながらも律儀に口に入った分は食べ、文句を言おうと口を開いた。



「なにす・・・」

「そういう意味じゃねーっての!」


瑞穂のほっぺたを思いっきり掴むと「うぶっ!」と言いながら顔をしかめる。




「誰だって嫌だろ、あんな場面」


「・・・・・・」


頬を掴まれたままブサイクな瑞穂が目を見開いた。



「普通嫌だろ」

「・・・・・・」


布津はため息をついてコンビニで買ったおにぎりを開け、ほおばった。



「何、我慢してんだ」

「私・・・我慢してる・・・?」

「してるからそうなってんだろ」

「・・・・・・ああ」
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