有明先生と瑞穂さん
有明は職員室に戻る前に携帯を開いた。


『今日夜会える?』


簡潔にメールを送る。

しかし夕方になっても家に着いても返事はない。


・・・それはもう予想済みだ。



時間が8時をまわったころ、もう夕食は済ませたであろう瑞穂に電話を掛ける。


プルルル・・・
プルルル・・・
プルルル・・・


10コール。出ない。
これも予想の範囲内だ。
しかし・・・少しだけヘコむ。


一度切って、もう一度掛けた。


正直誰かにこんなにしつこくしたのは初めてで少しだけ不安になる。


(嫌われたらどうしよう・・・)


少しだけ女々しいことを考えているとしばらくしてコール音が途切れた。



『・・・・・・・・・・・・はい』


土曜日と同じようにしばらくしてから控えめな返事。

瑞穂の態度に改めて傷つく。

そしてどれだけ土曜日の自分が鈍かったのだろうかと反省した。



「瑞穂さん、もう具合は大丈夫?」

『・・・えっと、は、はい』

「昼間のメール、見てくれた?」


返事のなかったメールに触れるのは言い出しづらいが勇気を出して聞くと、瑞穂は慌てて言い訳をした。


『えっと・・・その、返事するの忘れてて・・・』


「今からうちに来れる?」

『・・・・・・今日はちょっと』


避けられているということが確実になり落ち込む。
それでもめげずに有明は続けた。



「瑞穂さんの階まで迎えに行くよ」

『・・・ッ、そんな!私本当に今日は無理で・・・』

「俺のこと避けてる?」

『――――!』


――図星だ。



誰もいないのに強がって苦笑してみるが、それすらむなしい。


『そ、そんな!避けてるわけないじゃないですか!
避ける理由なんてないし・・・』

「理由は金曜日の夜のことでしょう?」

『・・・・・・違います』

「きちんと謝らせてほしいんだ」

『・・・・・・』


瑞穂の言葉が途切れれば、どういう顔をしているのかがわからないで不安になる。



だから会いたい。
きちんと会って話をしたい。
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