有明先生と瑞穂さん
――日曜日



約束していた有明とのデートの日だ。



有明は昨夜遅くまで仕事をしていたらしく寝坊してしまったため、瑞穂は有明の部屋で準備が整うのを待つ。



瑞穂が一人でリビングでテレビを見ていると急いでシャワーを終えた有明が濡れた髪をタオルで拭きながら戻ってきた。


「ごめん瑞穂さん!
『お詫び』って言ったの俺なのに結局待たせちゃって」


よっぽど慌てているのか、言いながら何かを探してバタバタ歩き回っている。


瑞穂は笑いながら有明に近づき、ガシガシと荒く髪をこする手を止めた。



「私は怒ってもいないし急いでもないですからゆっくり準備してください」


瑞穂がやんわりと有明の髪をタオルで拭けばようやく落ち着き動きを止めた。

自分よりも背は高いし大人なのに、目を閉じて黙って髪を触らせるその姿は子供のようだ。


「先生って結構真面目と見せ掛けてユルイですよね。
・・・初めて先生に声掛けられる前からなんとなくわかってましたけど」

「・・・・・・瑞穂さんやっぱり寝坊したこと怒ってる?」


愛おしい、という意味だったのだが目の前の教師は怒られるとビクビクする犬のようだ。


「そんなんじゃないですってば。
お仕事が大変なのはわかってるんですけど・・・でもリビングでそのまま寝ちゃうのは風邪ひきますよ。
これからどんどん寒くなるんですから」

「うん・・・硬い床で寝たから体が痛い」

「あははっ!」


髪を拭き終わると瑞穂は一度テーブルに戻り有明の元に戻る。



「それと、探しているのはこのメガネですか?」


「あっ・・・そこに置いてたんだ」


瑞穂がメガネを掛けさせたがると有明はそれも黙って目を閉じて受け入れる。


「それともこの金のメガネですか?銀のメガネですか?」

「・・・普通のメガネがいいです」

「素晴らしい!
正直なあなたには金と銀のメガネもお付けしましょう!」

「いっ、いらない・・・。普通のメガネがいい」
< 1,093 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop