有明先生と瑞穂さん
有明のこういう姿を知るのは自分だけだ。

有明がこういう姿を見せるのも、自分にだけだ。



今までは特に感じたことのなかった優越感みたいなものを瑞穂は感じていた。

そう思うようになったのはやはり、小浜という存在ができたからか――・・・。


あまり性格のいい人間の抱く感情ではないと知りながら、それでも今の満たされた気持ちを噛み締める。






この後大きな事件の引き金になる出来事があるとも知らずに――――・・・











「お待たせ」


寝室で着替えを済ませた有明がリビングに戻ると瑞穂も立ち上がって出る準備をした。


まずは上着と帽子とサングラスとマスクと・・・・・・


「ちょっ、ちょっと・・・待って待って!」

「え?何か忘れ物ですか?」

「そうじゃなくて!」


有明はハァ~~・・・と長いため息をつく。


「またそんな怪しげなカッコして・・・」

「だって誰かに会ったらどうするんですか」

「大丈夫だよ。そのためにも少し遠くに行くんだから。
着くまでは車の中だし平気だって」

「だめです!
先生はそういうところがユルすぎるんですよー」

「じゃあ俺は今日一日怪しげな子を隣に連れてウキウキと歩くわけだ・・・」

「我慢してください」

「・・・・・・せっかくかわいい服着てたから、ちょっと嬉しかったんだけどね」



「う・・・・・・・・・・・・」
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