有明先生と瑞穂さん
瑞穂はしぶしぶと目深にかぶった帽子を外した。


「それにそんな大きなマスクしてたらキスできないよ、口避け女さん」


「・・・どこでそんなことするつもりですか」


「今、だよ」



有明は瑞穂のマスクをそっと外すと不満そうに尖らせたその唇に一瞬だけ口付ける。



(ずるい・・・・・・)



結局また瑞穂の変装セットは全て剥ぎ取られ、有明は満足そうな顔をした。

わざとらしいことばかり言っているのにどうしても逆らえない。






有明に言いくるめられた瑞穂はすっかり機嫌を直し、エレベーターの中で今日の予定を立てる。

ご飯はどういうのが食べたいとか、こういう店にも寄りたいとかたわいもない話だ。


「今日の気分は和?洋?それとも中華?
俺給料出たばっかりだから今日はちょっといいお店に行こうよ」

「わ!いいんですか?!
そうだなー、お米食べたいです。
あ、でもハンバーグとかおいしそ・・・」


ポーン


エレベーターが1階について扉が開く。




「!!」





前を向いていた有明の顔色が変わり、何事かと瑞穂も前を向いた。







「えっ・・・」






エレベーター待ちをしていた目の前の人物に血の気がサーッと引く。







その目の前の人物も元々大きなその瞳を更に見開いて驚いた顔をしていた。
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