有明先生と瑞穂さん
「――って小浜先生が言ってたんだけど」

「へえ・・・・・・」



有明は瑞穂に小浜から言われたことを話した。

有明の部屋で瑞穂は加津佐の置いていったゲームをしていたのだが、その手を止めて「うーん」と考え込む。


「へぇって、それだけ?」

「いやぁ・・・驚きました」


ゲームを置いて机に肘をついてニヤニヤしている。


「何笑ってるの・・・?」

「いやあ~、小浜先生も実は結構いい人なんだなって」

「はっ・・・?」


どこか伝え方がおかしかっただろうか・・・。


有明は必死に今自分が説明したことを思い出した。



「でもバレなくてよかったですね!」


(・・・・・・バレバレだと思うんだけど)


でも言ったらまた慌てるだろう。


有明は瑞穂を引き寄せ後ろからぎゅっと抱きしめた。


「うわわっ、何ですか?」

「瑞穂さんは平和だね・・・」

「・・・え、なんか馬鹿にしてます?」

「してない、してない」

「・・・・・・」


ムスッとする瑞穂のうなじに唇をあてると、くすぐったいのか瑞穂の体が小刻みに震えた。


「・・・・・・っ、うぷぷっ、や、やめ、あひゃひゃっ」


(はあ、癒される・・・)


瑞穂がくすぐったそうにしているのにも構わず有明は肩に顔をうずめた。


――前はあんなに警戒心が強かったのに、もう今はすぐに人を信じるようになってしまった。

騙されてしまわないかが少し心配だけど、このままでいてほしい――――



少しずつ、少しずつ

瑞穂を変えたのは瑞穂のまわりの全ての人間だ。



(そういえば初めて見たときみたいな、寂しそうに遠くを見ることをしなくなったな・・・。

俺も少しは君を変える手助けになってるかな――?)
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