有明先生と瑞穂さん
「え・・・?」

「えっと、いやっ。
小浜先生の気持ちわからなくもないっていうか・・・だから気にしてないですから!
その・・・同じマンションだってことをまわりに言わないでいてくれればそれで・・・」

「・・・・・・」



(・・・・・・あれ?)



突然、小浜の表情から笑みが消えた――。




「私勘違いしてたのよ。
有明先生とお付き合いしてるのは瑞穂さんなんじゃないかって」


「・・・そ、そんな――」


「でも二人とも頑なに違うって言うから・・・」


突然張り詰めたように感じる空気に瑞穂は本をぎゅうっと握り締めた。





「お付き合いしてるのが瑞穂さんだったらよかったのに」





「え・・・・・・?」




意味がわからず聞き返す。


(私だったらよかった・・・?)







「瑞穂さんだったら有明先生を奪うのは簡単なのに――」





「・・・・・・・・・?!」





一瞬自分の耳を疑う。


目の前の人間は嫌味と取れる発言をしたあとに何事もなかったかのようにニッコリと笑うのだ。



(な・・・に・・・?聞き間違い・・・?)


それとも自分の捉え方が悪いのだろうか。


ただのブラックな冗談なのだろうか。


「え・・・あ、あは・・・。・・・?」


小浜が微笑むものだから、瑞穂も笑って返すことしかできない。



「瑞穂さんもそう思うでしょう?」


「なに・・・を・・・」




「瑞穂さんと私じゃ比べるまでもないじゃない」






そんな冗談を言う人だとは到底思えないが、本気でこういうことを言うとも思えなかった。
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