有明先生と瑞穂さん
瑞穂は自他共に認めるほど普通だ。
外見も成績も何もかも。
何か飛び出て得意とすることやいいところなんてない。
有明先生や布津が自分を好きだと言ってくれたときは驚いた。
特に有明先生なんて、今まで話したこともなかったのに、これだけいる生徒の中から自分を好きだと言ってくれた――。


今だってたまに信じられない。


それに比べて小浜は綺麗だ。
男受けがよくて、生徒からも他の男性教師からも人気。


小浜の言ったことに対して「どうして」なんて聞くまでもなかった。



これは小浜の瑞穂に対する『攻撃』だ――。



瑞穂は腹が立つより先に、突然見せてきた本性にただ驚いていた。



実際人間の頭はそう器用にはできていなくて、わかりやすく怒ったり攻撃されたりすればその勢いで怒り返すこともできるのだが、今のように笑顔でさも当たり前のことを言うように言われてはすぐに考えが追いつかずにとりあえず自分も同じように笑って返してしまう。

器用にできる人間もいるのだが、瑞穂はそうではなかった。



「え・・・小浜先生・・・?」



自分の指先がひんやりしていることに気づく。

――すごく緊張している。



小浜の顔からまた笑いが消えた。


しゃがみこんだままで固まる瑞穂をよそにゆっくりと立ち上がり、冷たい目で瑞穂を見下ろす。




「瑞穂さんなんかに負けるのだけは納得がいかないもの」
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