有明先生と瑞穂さん
「なっ・・・・・・!」


瑞穂の目にジワリと涙が浮かぶ。


恐怖・悲しい・傷ついた

そのどれでもない。
緊張ゆえの涙だ。


しかし泣いてしまえば負けのような気がして歯を食いしばって涙を引っ込めようと踏ん張る。



(有明先生のこと・・・やっぱりバレてるんだ・・・)


それでも認めるわけにはいかない。


「・・・・・・なんでそういうこと言うのかわかりませんけど・・・、小浜先生の言うとおり私と有明先生じゃ釣り合わないから付き合ってなんかいませんよ」


震える声を抑えて必死に言う。

「アハハ」なんて笑いながら言う自分が悔しい。

もっと強く腹を立てて言えばいいのに、怖くてできない。

こういうときこそ有馬や深江が羨ましいと思う。


「そうよね・・・」


整った顔に冷たい目を向けられればよりいっそう怖さが増す。


瑞穂は小浜を見ないようにして急いで本を本棚に詰め込んだ。

並びも入れ方もグチャグチャだが、放課後また来てやりなおそう――

今この場に二人でいたくはない。





「瑞穂さんのお友達も有明先生のことだぁい好きみたいだものね」



瑞穂の手がピタリと止まる。

人の友達を馬鹿にするような言い方が癇に障った。


「友達は関係ないじゃないですか・・・」


絞るように言った瑞穂の言葉に小浜はまた馬鹿にするようにクスッと笑った。
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