有明先生と瑞穂さん
「でも私は大丈夫。
こういうこと初めてじゃないからさ!
それにあの時も今も、噂だけで何かされたわけじゃないし!

それに、それにさ。

布津もいるし・・・今は、有馬さんと結ちゃんもいる!」


「ねっ」と笑って見せる顔。
空元気だが、それでも昔よりは強くなったと思う。


「・・・わかった。
でも、キツくなったらいつでも頼れ。俺でも誰でもいいから」

「うん、ありがと」






もしこれが、本当に有明と付き合っていない上で流れた噂なら・・・瑞穂はここまで落ち込むことはなかっただろうか?



二人が付き合っているのは二人の意思なのに、布津は有明に対して怒りが沸いた。


(何やってんだよ、有明は・・・っ!)



これがただの嫉妬だとわかっている。

自分が有明の立場でも、噂話までどうにもできないだろうし、あの事件での有明の行動は咎められるものではない。



それでも布津はこんな瑞穂を見て有明に対して腹を立てずにはいられなかった。





「晴ちゃん!」


教室に滑り込むようにして入ってきた深江が、真剣な顔をして瑞穂の元へ走ってきた。


「ごめんっ!!結のせい!!」


「え・・・?」


布津と瑞穂は首をかしげた。




とりあえず様子のおかしい深江を落ち着かせ、人に聞かれない場所へと移る。


深江は移動中もずっと瑞穂の手を握り
「どうしよう・・・どうしよう・・・」
と小さな声で呟いていた。


深江の指先が冷たい。





「結ちゃんのせいって、何があったの?」

「・・・結もおかしいと思ってたんだ。
ただ有明先生が抱っこして保健室に連れて行ったってだけで妙に噂が広がるな、って」
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