有明先生と瑞穂さん
「・・・はあ゙ッ・・・!!はあ゙っ・・・!!」


自分よりも息を上げた女子が、瑞穂が潜む部屋を通り過ぎる。


「はあ゙・・・うぐっ・・・くそぉっ・・・!ううっ・・・なんであんな女・・・ひぐっ・・・」


遠のく声は泣きながら、悔しそうに唸る。



「・・・・・・ぷはあっ!!」


止めていた息を吐き出し、瑞穂はようやくゼーゼーと息を切らせた。




(怖い・・・)


今になって体がガタガタと震える。

あんな大人しそうな人だ。

今まで、もしかしたらひっそり、自分から声を掛けることもできずに影からずっと思いを募らせていたのかもしれない。

だから、今回の噂を聞いて、いてもたってもいられなくなってしまったのだろう――。

今振り切ることができても、もしかしたらまた同じように襲ってくるかもしれない。


何も解決していない――・・・・・・。



(怖い・・・!)



あざ笑う生徒。
噂を信じて憎む生徒。

そして小浜。



嫌悪し憎まれることが怖い。





「わっ、びっくりした・・・どうしたんですか?」

「!!」


突然の人の声に瑞穂は驚き顔を上げた。


「えっ・・・瑞穂さん」

「有明先生・・・」



瑞穂が飛び込んだ部屋は給湯室だった。


「こんなところで何してるの?」

「えっ!!い、いやっ・・・」


有明が手を引き立ち上がらせる。


「こんなとこに座ったら汚いよ」


瑞穂のスカートの汚れをポンポンと優しく叩き落としながらそう言うが、瑞穂は答えない。
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