有明先生と瑞穂さん
「みず・・・

・・・・・・っ!!」


有明が顔を覗き込みかけた時、瑞穂が突然有明の首に腕をまわして抱きついた。


「え?!」


校内では人目がなくても避けていたのに突然の大胆な行動に驚く。

有明はとりあえず人がいないことを確認して優しく肩を抱いた。

その時、瑞穂の首元に薄く見える傷に気づく。

(・・・・・・?)

時間がたてば見えなくなってしまうほどのその小さな傷を有明はそっと指でなぞった。

「あっ・・・!!」

瑞穂の体がビクリと跳ねて有明から離れる。


「どうしたの?」

「あっ・・・えっと・・・ごめんなさい!違うんです!!」

「違うって・・・」

「つい!!ムラムラしちゃって!!それだけ!それだけなんです!!」

「え・・・ムラムラって・・・」


つい言ってしまったでまかせにハッとして瑞穂は顔を赤くする。


「いや・・・ムラムラってのは嘘ですけど・・・」

「だよね・・・」


有明は瑞穂の頭をそっと撫でた。


「話せないこと?」

「・・・・・・」


瑞穂の視線が泳ぐ。

有明はため息をついて手を離した。



「すみません・・・。結ちゃん待たせてるんで・・・」

「わかった・・・」


有明の顔が落胆している。
しかしそれを見ないように瑞穂は給湯室を飛び出した。


―――どうして・・・・・・?





有明はため息をついて給湯室の奥の扉を開けた。



ガラッ


「!!」

「お疲れ様です、有明先生」




「・・・お疲れ様です・・・、小浜先生・・・」


布団のシーツを片手に小浜はニッコリと微笑んだ。
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