有明先生と瑞穂さん
***



「晴ちゃん、今日部活でしょ?
私一緒に行って終わりまで待ってようか?」

「大丈夫だよ、結ちゃん」


次の日の夕方、部活へと向かう瑞穂に深江は心配そうにそう尋ねた。

昨日、体育館に来た瑞穂を見て尋常ではないと気づいた深江が問い詰めたため、深江達になら・・・と大まかに事件を説明したのだ。

またその女子が来るかもしれないし、他の生徒から嫌がらせをされるかもしれない。

だからといって四六時中、深江達に面倒を見てもらうわけにはいかない。


「なるべく一人にならないようにするから」


そう言って心配そうな顔をする深江と別れ、図書室へ向かった。




(ごめんね結ちゃん。本当は――)


怖い。

怖いけれど――




(私だって、逃げてるばかりじゃないんだから)


歩きながら、ぎゅっと唇に力を入れる。



瑞穂は図書室ではない場所へと向かっていた。







瑞穂は校内を探し回る。

もしかしたらもう帰ってしまったのかもしれない。

職員室を確認するときは有明先生に見つからないようにこっそりと確認した。

・・・ゆうべ会ったり連絡を取り合うことはなかった。

だから昨日のことも聞かれることもなかったし、話すこともなかった。だけどそれでいい。

心配は掛けたくない。


(有明先生は、私が守る)


半ば諦めかけた時、昨日の給湯室から丁度その人物は現れた。




「探しました、小浜先生」



声を掛けると一瞬少しだけ目を見開いて、口元だけで薄く笑った。
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