有明先生と瑞穂さん
小浜はふっと小さく笑うと泣く瑞穂を一人置いて部屋を出て行ってしまった。


「うっ・・・うぐっ・・・」


一人になった部屋で声を出して泣く。



結局彼女に一矢報いることはできなかった。

自分のためとはいえ、有明先生にも腹を立てずにはいられない。



どうして話してくれなかったんだろう。

どうして相談ひとつしてくれなかったんだろう。

どうして、どうして小浜先生なんかに――



(あ、そうか・・・)



きっと、有明先生も小浜先生から話を聞いたときはこんな気持ちだったんだ。


『どうして自分に相談してくれないんだ』

『頼ってくれないんだ』


『どうして』

『どうして』――・・・。




有明先生を守りたくて、そのためならどれだけ自分が傷ついても構わなかった。

だけどそれは有明先生も同じなんだ。



自分の間違いに今更気づいても今の自分にはどうすることもできない。


ただ黙って守られるしかない、何もできないちっぽけな存在になっていたことに気づく。


そんな自分が有明先生を守ろうだなんて、なんて傲慢だったんだろう。






ようやく涙が止まったころには日は沈み、早く部活が終わる生徒も帰る頃になっていた。

遅れて行く予定だった部活は完璧にサボってしまった。


泣き腫らして赤くなった目を押さえてそのまま給湯室を出る。


と、廊下の角を曲がったところで見知った人物がしゃがみこんで携帯をいじっていた。


「遅かったわね、晴子」


「・・・・・・有馬さん」


有馬はパタンと携帯を閉じると真剣な顔を瑞穂に向けた。
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