有明先生と瑞穂さん
「話の前に!
オマエさー、それわざとやってるだろ」

「・・・・・・うん」


瑞穂は素直に返事をする。


「俺をたぶらかしたいわけじゃないよな。
有明に対する嫌がらせのつもりか?
喧嘩でもしたのか?」

「喧嘩なんかしてない」

「こんなの、有明にわざわざ話さないと何の嫌味にもならねーぞ」

「いいの。私の自己満足だから」

「・・・ちったぁ俺の気持ちも考えろよ」

「・・・・・・ごめん」


謝るくせに、なぜかその表情は全てを諦めて悟っているようで布津は不安になる。


「瑞穂、最近のゴタゴタで気が滅入ってんだろ。
気持ちはわかるけど・・・」

「それだけじゃないんだ」

瑞穂は一度ゆっくりと目を閉じて薄く見開いた。
その表情は疲れきってる。


「もう、有馬さん達に全部話した方がいいのかと思ってるんだ」


「――――!!」



布津の目が見開く。


「どういうつもりだよ・・・」

「もう私、このまま隠していくことに疲れたんだ・・・。
ずっとずっと罪悪感が残ってて・・・有馬さんや結ちゃんが優しくしてくれればくれるほど自分が嫌になる」

「オイ!」


布津は瑞穂に駆け寄り、乱暴にその体を引き起こす。


「じゃあ有明はどうなるんだよ!!
瑞穂は有明のために隠してるんじゃなかったのか?!
そうやって罪悪感を抱くのも、しんどい思いするのもわかってたことだろ?!
今更何言ってんだよ!」

「有馬さん達は誰にも言わないよ!!!」


「!」


張り上げた瑞穂の声はまるで泣き叫んでいるようで布津は驚く。


しばらくそうやって二人固まっているとドアをノックする音がして

「何かあったの?大丈夫?」

と心配する母親の声が聞こえた。


「わりぃ、ちょっとゲームに夢中になってた」

「もー、驚かさないでよー」


パタパタと遠のく足音を聞いて、瑞穂は小さく「ごめん」と謝った。
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