有明先生と瑞穂さん
「・・・・・・ッ!」


瑞穂はその場を逃げるように飛び出した。


――もう知らない!有明先生なんか知らない!!




瑞穂が走り去った後には小浜と有明だけが残された。


「・・・・・・どうして今更庇うんですか?」


小浜が言う。


「庇う?」

「そうです。てっきりあの子の味方をしに来たと思ってたもの」


――そう、有明は初めから全て気付いていたのだ。

小浜の思惑全てを――――。


有明は息をひとつついて小浜を見た。


「そうですね。貴女があの3年生・・・吾妻さんを仕向けたのは間違いないでしょう」

「ふふ・・・有明先生も同じように思ってるんじゃないですか」

「でも僕にはきちんと根拠がありますから。

・・・さっき彼女と話してきました。

聞きましたよ。
貴女が親身になって相談に乗ってくれていたと」

「!――っ、そんなの・・・」

「そうですね、証拠にはならない。でもそれだけで十分だ。
・・・ただ瑞穂さんには噂に流されて嫌がらせをしていた子達と同じように、根拠のない話に流されて汚れてしまうような子になって欲しくないだけです」

「・・・・・・どこまでも、あの子に甘いのね」


小浜はもう、有明にも隠すことなく嫌味な笑顔を向ける。

有明はいつもの作ったような笑顔を向けた。


「貴女と俺は似ている。
だからね、嫌いじゃありませんよ、計算高い女性は。



・・・だけど、陰湿な女は嫌いだな」



突然低くなる声に小浜の体温は急激に低くなった。

しかし有明相手でも無様な姿は見せたくなくて更に挑発したことを言う。


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