有明先生と瑞穂さん
その手はとても怪我を負った手ではないようで、小浜が引き剥がそうとしてもびくともしない。



「俺がすることは、貴女を世間体に辱めたり社会的地位を落としたりすることだけだと思ってますか?」

「ど・・・どういう・・・」


「俺だって人間だ。
・・・今はすごく、腹が立ってる。
いい顔をして間接的に貴女を貶めるのもいいかもしれないけど・・・それじゃ気が済まない。
それに俺はそこまで紳士じゃないよ。


・・・俺が直接手を下すなんて、考えませんでしたか?」


「・・・・・・!!」



背筋が凍る――。


唇がガタガタと震え、もう何も言うことはできない。

叩きつけられた壁が冷たいと、ようやく感じる。


――恐怖―――・・・








「なっ、何やってんですか有明先生!!」


「!!」



突然のその声にハッとした有明はその手を緩めた。

冷たかった目がまたいつもの優しい目つきに戻る。


「っがはっ!!ごほっ!!」


離された手に咳き込みながら声のした先を向くと、そこにはさっき走り去って行ったはずの瑞穂が青い顔をして立っていた。


「え・・・どうして瑞穂さん戻って・・・」


同一人物とは思えないほどに有明が慌てふためく。



「確かに腹は立ちましたけどっ・・・よく考えたら私も感情的になって悪かったなって思って・・・
だからやっぱり二人に謝ろうと思って戻ってきたんですよ!

な、なのに先生が何やってんですかあ!」


さっきとは逆に瑞穂が言いながらずんずんと歩み寄り、有明を叱りつけた。



(謝る・・・?私に・・・?)


小浜は驚く。


「女性に暴力振るう人だったなんて最低です!怖いです!DVの恐れ有りです!」

「お、大げさだよ・・・俺はそんな・・・」

「DVする本人はそう言うもんなんですぅー!!」
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