有明先生と瑞穂さん
その痛々しい手を見つめると、反省と後悔ばかりが瑞穂を襲う。


いろんな考えを巡らせているとゆっくりとその手が瑞穂に近づいた。


「・・・・・・? え・・・?」


ハッと気付いた時にはすでに遅く、有明が目の前にまで詰め寄る。


「え・・・ちょ、まっ・・・」


あたふたと後ずさるとすぐに6人掛けの大きな机にぶつかりバランスを崩した。

「うわっ!」

よろめく瑞穂の手をすぐに有明が掴んだと思うと、そのまま引き上げることなく机の上に押し倒す。

有明はなるべく衝撃を与えないように支えたが、不格好にも瑞穂はガンと音を立てて頭をぶつけた。

それでも有明は表情を変えないでじっと瑞穂の目を見つめる。


「ちょ・・・っ、離れてください先生!あんなことがあったばっかりなのに・・・」

「俺はね、瑞穂さん」


瑞穂の声を遮って、有明は不敵な笑みを浮かべた。


「俺は瑞穂さんにも怒ってるんだよ」

「え・・・」


必死に起き上がろうとする瑞穂の両手を掴み、上から見下ろす有明の笑顔は少し怖い。

瑞穂は抵抗をやめてごくりと唾を飲み込んだ。



「全部わかってたよ。

君が何を考えているかも、小浜先生がどんな悪だくみを考えているかも・・・。

君がここまでひどい目に合っているなんて思わなかったけど、それでも俺を全く頼ってこない理由も知ってるよ」



瑞穂の手を抑えつけた有明の指が瑞穂の指を撫でる。



「君が小浜先生に騙されて、嘘をつかれてるのも知ってた。
だけどね、俺はあえて黙ってたよ。
君に何も言わなかった。

その理由、わかる?」

「・・・・・・」


わからないことはない。

逆の立場で考えてみれば簡単だ。

それを今まで考えなかったことはない。

今初めてその事実を知って、有明の気持ちは痛いほどにわかる。
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