有明先生と瑞穂さん
「自分の不甲斐なさに腹が立つ。

自分は君に守られてばかりなのに、君を助けるのは口之津先生ばかり。

君が頼るのは布津君や、有馬さん達ばかり。

それが仕方ないこともわかってるし、君ならそうする理由もわかる。

なのに、どうしても醜い感情が支配するんだ。

君を支えて、助けてくれる人達に対してまで独占欲による汚い感情が生まれるんだ。

そう感じるたびに自己嫌悪にも陥るんだ」


寂しげな顔をされれば瑞穂はさらに罪悪感が沸いた。

もっといい方法はなかっただろうか。

自分がうまくできていれば――

もっと有明先生や小浜先生のように、要領よく生きていければ――




以前、国見が言っていた有明と瑞穂が似ているところ。

それはこういうところだったのだ。

最終的に自分ばかりを責めて、自分の醜い部分に落ち込む。

なんともいじけた性格だ。



「ごめんなさい・・・私・・・結局先生のために何もできなくて・・・」

「違うよ」


ようやく瑞穂の口から出てきた言葉を有明は否定する。


「違う、そういうことじゃない。
言ったでしょう?瑞穂さんが考えてることは知ってたって。
だから君が俺と同じように、自分を責めることだって知ってる。
君が俺の気持ちを知って心を痛めてることも知ってる。

・・・今のは俺の反省」

「そんな、先生が反省なんて」

「俺が反省しなくていいなら、瑞穂さんだってそうでしょう」


有明にそう言われてしまえばもう何も言えない。


(あれ・・・?それじゃあ・・・・・・)


瑞穂は気付く。


「え・・・じゃあ、先生が怒ってることって・・・?」


おずおずと有明の顔を見上げる瑞穂を見て、有明は満足そうに笑った。
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