有明先生と瑞穂さん
「俺って自分勝手な生き物でね。
こういう感情を抱く自分が汚いなんて言いながら、抑えることはできないんだ」

「・・・?」

「俺の嫉妬を怖いって言ったのは君でしょう?」

「えっ」


有明の嬉しそうな笑顔に瑞穂はようやく嫌な予感を感じ取った。

不安を感じていたのは有馬だけではなかったのだ。


「布津君との関係は、仕方ない。
だけどね、口之津先生とはそういう間柄じゃないのに仲良すぎ。
お互い恋愛感情じゃないにしても、特別な気持ちがあることが気分が悪いんだよねえ・・・」

「え・・・あの・・・」


目の前の人間はものすごく黒いことをぶっちゃけている。

なんとなく空気では伝わっていたが、ここまで目の前でぶっちゃけられると怖い。


「君の様子がおかしいのをいち早く気付くことも、体を張って君を守ることも、わざわざ君を見張ってまで怪しい人物が近付かないか隠れていることも・・・


ああそうだ、何より気に入らないのは君を名前で呼ぶことだ。

・・・布津君すら名前で呼ばないのに」


「え、ええぇぇ~・・・」


理不尽な、と思ったが口にはしない。
有明は理不尽は重々承知で喋っている。


「・・・瑞穂さんだってそうだ。
今まで教師なんてどれもジャガイモくらいにしか思ってなかったくせに、口之津先生にだけよく話したりメールまでしたり。
俺の初めのころの苦労はなんだったのさ」

「ジャガイモって・・・」


予想以上に口之津に妬く有明は、可愛さ半分、ドン引き半分。
・・・いや、恐怖が大半を占めている。



「だから、怒ってるんだよね、俺は」


ほらきた。

これに対する瑞穂の言葉はこれ以外用意されていないのだ。



「じ、じゃあ・・・どうすれば許してくれるんですか」


待ってましたと言わんばかりに有明の顔が嬉しそうに笑った。
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