有明先生と瑞穂さん
「昔っから変わんないね。
ガキみたいに・・・人のものが大好きで、手に入らないと余計に欲しくなる。

周りからよく聞いてた、噂通りの子だね。

そして、いつまでも成長しないまんまだね」


何もかも知ったようにいう国見を小浜はまた睨みつけた。


「アンタに何がわかるっていうのよ!!」


人通りは少ないが、それでも他人の目を構うことなく叫ぶ。
小浜はもう心に余裕がなかった。


「私の何が悪いっていうの?!
私はあの子とは違う!
欲しいものは何をしたって手に入れる!

それだけ好きなんだもの!

欲しいものは絶対に諦めないだけ!


それのどこが悪いって言うのよ――・・・!!」



大声で言う小浜の言葉を国見は黙って最後まで聞いた。

ずっと哀れむような目で――

小浜はその目が気に入らない。



「可哀相な子ね・・・」


国見の口から出た言葉は、嫌味でも何でもなく本当に哀れんだ言葉だった。



「確かに、一途で真っ直ぐで、望みが薄くても諦めないことはいいことなんのかもしれない。

だけどさ、小浜チャン。


小浜チャンのはただの駄々っ子だよ」


「・・・・・・」


「小浜チャンはホントにただの子供だ。

世の中ね、欲しくても手に入らないものってあるんだよ。

それを小浜チャンは今までいろんな方法を使えば手に入れてこられただけ。
恵まれてただけ。

でもね、世の中そんな甘くないんだよ。

それをただ、

欲しい欲しいって駄々こねてただけ」


腹が立つのに、大嫌いなのに、その言葉はまるで本当に子供をあやすように優しく諭す。



「アンタに・・・何が・・・」



それ以上、言葉は出なかった。



国見はそんな小浜の肩をポンポンと優しく叩き、校内へ歩いていく。


小浜の目からポロポロと涙がこぼれた。



――悔しい・・・





手に入らないものがあると知ると人は悔しさを感じる。
そしてどうにか手に入れようと努力して、成長する。

小浜は今初めて悔しさを感じていた――。
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