有明先生と瑞穂さん
有馬と深江が離れた後で、瑞穂は言いづらそうに布津に切り出した。


「布津・・・あ、あのさ・・・」

「?」


――・・・




「はぁーーーー?!」



事情を聞いた布津は驚愕する。


「最悪・・・おまえ最悪・・・」

「うっ・・・」

「彼氏の名前知らないって・・・最低じゃないの?お前・・・
有明絶対傷つくぞ。あーあ・・・」

「わ、わかってるよー!だからこうしてコッソリ調べてるんじゃん!
布津、知らないの?!」

「えー・・・俺も知らねー。
別に俺と有明は特別な関係でもなんでもねーし」

「うそ!抱き合ったりしてた!」

「してねーよ!変なこと言うな!」


唯一校内で相談できる布津も頼りにはならなかった。

昨日あんなことがあったばかりでは他の人には聞けない・・・。
当然、絶対知ってるはずの有馬にも聞きづらかった。


(いや・・・あとひとりいるな・・・)


――そう、小浜だ。


(って絶対聞けない!!!)


聞いたところで教えてくれるわけがない。



休み時間、瑞穂はもう一度コッソリ職員室を確認しに行く。
しかし当然、都合よく名前が書かれたものはなかった。

不振な行動を取る瑞穂に気付いて声を掛けたのは口之津だ。


「・・・・・・何やってんだ、晴」

「げっ・・・!口之津先生・・・」

「『げっ』とは何だ!命の恩人に向かって!」

「命のって・・・そんな、まるで殺されかけたみたいな・・・」

あながち違うとも言えないが。

「感謝はしてますけど!
でも駄目なんですっ!!
口之津先生は近づかないでください!!」

「はあ?!」


走って逃げ出す瑞穂に口之津は頭にたくさん『?』を浮かべた。
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