有明先生と瑞穂さん
(有明先生に告白された場所――・・・
そして、私が先生に思いを伝えた場所・・・)


元々大好きだった図書室だが、ここには二人の秘密が詰まっている。

もっともっと大好きな場所――



布津が間違ってここに返した、有明の辞書があった場所を指でなぞる。


「ふふっ」


瑞穂は何かあるとここによく来ていた。


今回の小浜の件だけじゃない。
少し気が乗らないような落ち込んだときもここに来れば少しだけ楽になったような気がするのだ。


(って、気が楽になったって何にも解決しないんだけどねー)


しゃがみこんだまま一人苦笑すると、古びた辞書の中に一冊の比較的新しい辞書が目についた。


「え・・・ウソ・・・」


諦めかけていた瑞穂に光がさす。


あの時と同じ光景


背表紙に『有明』と書かれた辞書――





「ええっ?!なんで?!」



瑞穂は思わずその辞書に飛びついた。

きっと布津と同じように大雑把な生徒にでも貸して、同じような経由でここに来たのだろう。


「うっ、運命だーーーーっ!!」


瑞穂は天を仰いで喜ぶ。

きっと名前が書いてあるはず!


瑞穂はその辞書に手をかけた。

しかし押せど引けどその辞書はやっぱり抜けない。


(ホンット・・・どうやって詰め込んでんのよコレ!)


早く見たい気持ちで焦り、多少扱いが荒くなる。

ひとり「ふん!ふん!」と声を上げて辞書を引っ張った。
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