有明先生と瑞穂さん
(・・・・・・っ、名前・・・・・・!)



思わず顔を上げると久しぶりに、真っ赤になった有明の顔。


他の先生・生徒や、小浜の前での余裕の顔なんてどこにもない。


名前を呼ぶだけで真っ赤になるなんて誰も知らない――。



(こんな気持ちになるなんて・・・)


名前を呼ばれるとこんな気持ちになるなんて――


愛おしくて

愛おしくて


ぎゅっと抱きしめる。




「ふふっ」

「!」


有明が何かを思い出したように笑った。



「俺のことは呼んでくれないの?」

「・・・・・・!」


――来た!


いや、予想はできていた。

しかしもう、これ以上ごまかせない。どうすることもできない。

正直に言うしか――・・・


「いやっ・・・あの、実はっ・・・」


「ぷっ、あははは」

「!」


突然有明が噴出して笑う。
瑞穂はただその様子を呆然と見つめるしかできなかった。



「知ってるよ」

「え・・・」

「どうせ瑞穂さんのことだから、俺の名前なんて知らないんでしょ」

「・・・・・・! ・・・ぅぇぁっ」


焦りが顔に出るが、有明はそれを見てまた笑った。


「・・・・・・ゴメンナサイ」

「はははっ、いいよ。瑞穂さんが慌てるとこ見てて俺も楽しかったし」

「えっ!!そこまで気づいてたんですか!」


有明はまだ肩を揺らして笑っている。


「加津佐と国見もそのこと知ってたよ。
二人に聞くかなって思ってたんだけど、やっぱり聞けないでいたみたいだね。
二人ともすごいおもしろがってた。
加津佐にいたってはヒントまで与えてたんだけど」

「~~~~っ!!」


―――やられた。


そう思ったがもう遅い。


「ごめんなさい・・・」


瑞穂はもう一度謝った。
< 1,250 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop