有明先生と瑞穂さん
「おい!おまえ!」

「…何?」

休み時間いてもたってもいられずに布津は初めて自分から女子に話しかける。

他の男子にからかわれるかもしれないが、そんなのは今は気にならなかった。


「布津くん」

「うぇ?!俺の名前知ってるの?!」

「同じクラスだもん。布津くんは覚えてないの?」

「・・・」

「私は瑞穂 晴だよ」

「『くん』とかつけるなよ!そーゆーのなんかむずがゆい!」

「…うん、わかった。布津!」

「え」

「布津!」

(名前じゃねーんだ…)


布津にとって瑞穂の第一印象は『なんかズレた変なヤツ』だった。


「おまえなんであんな足早いの?何かやってんの?」

「んー…別に何にも。運動が特に好きってわけじゃないし」


布津はムっとした。
運動好きでもない、何をやってるわけでもない人間に負けた。

この怒りは自分に対するものか瑞穂に対するものかわからなかった。


これ以降、体育だけでなく休み時間や放課後のたびに布津は瑞穂に対抗心を燃やし勝負をけしかけた。
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