有明先生と瑞穂さん
時計は午後9時半を指していた。


「?」

「俺もちょっと気分転換したいな…」

「え?」

何か意味の含まれた言葉と笑みはわかったが、意図することがわからず瑞穂は聞き返した。


「まだ時間大丈夫?」

「あ、ハイ…11時までに帰れれば」



「それじゃあ俺とちょっと出かけない?」






今二人はエレベーターを1階まで降りている。

瑞穂に断る理由はどこにもない。

エレベーターの中は不自然な沈黙が続き、短い時間なのに少し居づらい。


「…あの、どこに出かけるんですか?」

勇気を出して沈黙を破る。


「んーそうだね…車は使わないからそんな遠くまではいかないよ。近くのコンビにくらいまで」


「え?何か買うものでもあるんですか?」


「うーん、そうだなぁー…」


先生は的を得ない言い方をして言葉を濁す。

その後すぐにエレベーターの扉が開き、瑞穂の目は自然と先生から前に向けられる。
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