有明先生と瑞穂さん
一歩踏み出した時に先生は少し小さい声で言った。


「…本当は、二人でもう少しいたい口実なんだけど」


「え…」

振り返ると同時に瑞穂より一足遅れて先生は歩きだした。

足早に瑞穂を追い越し一歩先を歩くのは赤くなった顔を見せないようにするためか。



そんな有明先生を見て胸がきゅっと締まる感覚がした。



(――ああ、私はもう大分、有明先生に翻弄されてるのかもしれない)



外に出ると空には星が見えた。

到着した時は加津佐で手一杯で見上げる余裕のなかった星。

瑞穂は空をぼーっと見上げる。


すると隣でふっと笑う声がして慌てて先生の方を振り向いた。


「…前も一人でそうやって星を見てたね」

「…え?」
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