有明先生と瑞穂さん
保健室は戸が半分程開いていた。

(誰かいたのか・・・)


有明先生がそっと顔をのぞかせると、瑞穂が寝ていたベッドのカーテンが開きっぱなしになりベッドの近くに誰かが腰掛けている。

(あれは・・・)


瑞穂の顔は見えなかったがまだ眠っているのだろう。

心配そうに顔を覗き込んでいるのは布津だった。

部活前なのかユニフォーム姿だ。

バスケ部はもう始まっているはず。
きっと遅刻で叱られる覚悟でここにいるのだろう。


有明先生がそっと保健室へ入るとようやく瑞穂の顔まで見えた。

布津は瑞穂の手を大切そうに握っていた。




有明の心がざわつく。



布津は真っ直ぐ瑞穂を見つめ、その表情は焦がれているのだとすぐわかる。


(きっと俺もあんな顔してるんだろうな・・・)


有明は複雑な気持ちになる。


今すぐあの手を引き剥がしてやりたいが、

もう少しだけそっとしておいてやりたい



有明の中に不安や嫉妬やよくわからない感情が湧き、まざりあう。



(こんな気持ちになったのは初めてだ)
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