有明先生と瑞穂さん
「…瑞穂さん?」

うつむいていて有明先生からは顔が見えない。

「どうしたんですか?…元気ないですね」


「・・・・」


「瑞穂さ…」
「私は」


「?」


「知らない間に誰かに嫌な思いをさせたりしてるのに、いつも気づかないんです」


突然脈絡のないことを話す瑞穂にどう返していいのか戸惑う。


「裏切られるのが怖いから、いつまでも臆病なんです」


(声が震えてる…)


「瑞穂さん」

重い本を片手で差さえてグラグラさせながらも瑞穂にそっと手を伸ばす。



と、その手が瑞穂に触れる前に勢いよく顔を上げた。


「!」


口を食いしばって、目が少し潤んでいる。


有明の胸がドキリと鳴った。
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