有明先生と瑞穂さん
いつも布津の口から聞いてきた『好きだ』と言う言葉。


何度となく冗談だと思い込んで疑わなかったその言葉。




真剣な顔で言われたことも何度だってあるのに。



それでも全く気づかなかった。



こんなに心臓がはねるのは初めてだ。




いや、違う。



(私はこれに似た感覚を知ってる――)




全然違う匂いだけど――同じ男の匂い

全然違うやり方だけど――振りほどけない男の力

全然違う声だけど――耳元でささやかれると全身を痺れさせるような低い声



(私はこれを知ってる――・・・)




なんで。

どうして。


どうして今まで気づかなかったの。
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