有明先生と瑞穂さん
「布津には答えは出してません。
聞かれもしませんでした。
だっていきなりそんなこと言われてすぐに答えなんて出るわけないし・・・」


「また俺の早とちりか」

ははっと笑う先生に顔を向けるとやり切れないような顔をしていた。

とても苦しそうだ。

「いつも待たせてごめんなさい」

自分が返事をしないのは――答えを出せないのはもしかしたらその答えで誰かが離れていくのが怖いからなのかもしれない。


「・・・俺、瑞穂さんに関してだけなんだ・・・馬鹿になるのは」

手元を見て呟く。

「いつもはもっと冷静で計画的で客観的に見れるのにどうしても駄目だ」

「・・・でも私は先生のそういうところも嫌いじゃないです」

「気を遣わなくていいよ」

そんなつもりはないのに・・・。



「俺はウソツキだね」

「?」

「結局こうして無理矢理キスしちゃった」

「・・・!」

恥ずかしくなり顔を伏せる。


そう、先生は瑞穂のファーストキスを大切にしてくれていた。

『君が俺を好きじゃないキスなんて満たされないよ』

そう言った。


今日したキスは完全に衝動的なものだった。
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