有明先生と瑞穂さん
「・・・有明の好きな子がまさか晴ちゃんだとは思わなかったな」


唐突に加津佐はさっきより小さい低めの声で言う。

その言葉を聞いてリラックスしかけていた瑞穂の心臓がドキリと跳ねた。


(・・・さっき有明先生と加津佐さんが言ってたのってこのことだったんだ)


何も答えられずにいると加津佐はそのまま言葉を続けた。


「最近アイツの様子が変わってきてるのはわかってたんだ。
なんつーの?
自分では隠してるみたいだけど火がついたっていうか、花が咲いたって言うか」

自分の例え方にハハハっと小さく笑う。


「でもここ一週間くらいかなー。なんかヤケに調子悪そうでさ。
やっぱり本人は隠してるみたいだけど、俺って有明としょっちゅう一緒にいるからわかっちゃうんだよね。

言ってくれればできることはするんだけど言わないから・・・

隠してるのすら辛そうだったからここ数日あいつんちになるべく行かないようにしてたんだ。

昨日も倒れたって聞いて心配だったんだけど俺何にもできねーし、リサに・・・あ、リサって彼女の名前なんだけどさ。
アイツに看病頼んだんだー」


「そうだったんですか・・・」


有明先生と加津佐の長い付き合い。
お互い言葉にしなくても変化に気づき心配して。
言葉にして心配しなくても気遣われていることに気づく。


有明先生はそんな加津佐に感謝して今日自分のことを話すことを決めたのだ。


それは言葉に出して説明しなくてもこうやって瑞穂を連れてくるだけでわかった――というわけだった。
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