有明先生と瑞穂さん
「あれ、これ図書室のじゃない」
古ぼけてくたびれた辞書の中にひとつだけ目立つその辞書を見ると広い背の下の方にペンで『有明』と書かれていた。
「なんだ、先生の辞書ここにあったのか」
誰か生徒が借りたはいいものの、先生から借りたことを忘れてここにつっこんだのだろう。
・・・ズボラな生徒もいたものだ。
返しておこうと手を伸ばしかけたとき、ドサドサっという音とともに「キャ!」という女性の声が聞こえた。
慌てて声のする方へ向かうと50代後半くらいの女性が落ちてきた本の下敷きになってしりもちをついていた。
「大丈夫ですか?!愛野先生!」
彼女は図書室を管理している図書部の顧問だ。
「本をしまおうと思ったらバランスを崩しちゃって・・・私ったらだめね」
おっとりとした口調でゆっくり喋りながら瑞穂に手を引かれ立ち上がる。
「もっと散らかしちゃったわ。こんなんだったら無精せずに脚立をもってくればよかった」
「大丈夫ですから、ここは私に任せてください」
「ごめんなさいね」
瑞穂は先生を気遣っててきぱきと本を片付けた。
古ぼけてくたびれた辞書の中にひとつだけ目立つその辞書を見ると広い背の下の方にペンで『有明』と書かれていた。
「なんだ、先生の辞書ここにあったのか」
誰か生徒が借りたはいいものの、先生から借りたことを忘れてここにつっこんだのだろう。
・・・ズボラな生徒もいたものだ。
返しておこうと手を伸ばしかけたとき、ドサドサっという音とともに「キャ!」という女性の声が聞こえた。
慌てて声のする方へ向かうと50代後半くらいの女性が落ちてきた本の下敷きになってしりもちをついていた。
「大丈夫ですか?!愛野先生!」
彼女は図書室を管理している図書部の顧問だ。
「本をしまおうと思ったらバランスを崩しちゃって・・・私ったらだめね」
おっとりとした口調でゆっくり喋りながら瑞穂に手を引かれ立ち上がる。
「もっと散らかしちゃったわ。こんなんだったら無精せずに脚立をもってくればよかった」
「大丈夫ですから、ここは私に任せてください」
「ごめんなさいね」
瑞穂は先生を気遣っててきぱきと本を片付けた。