有明先生と瑞穂さん
瑞穂の目がじっと有明を見つめる。

やっと冷静になったのだと解った。



「布津は・・・

布津は、言ったりしない・・・」


そんな奴じゃない。



自分が一番知ってるはずなのに、他の人から言われて初めて気づくなんて――・・・。



疑ってしまって、布津にも申し訳ない気持ちになると、それに気づいてか有明先生はまた、ヨシヨシと瑞穂の頭を撫でた。



「ごめんなさい・・・」

「ううん、元はと言えば俺の問題だから、こうやって心配してくれることが嬉しい」


そう言われてしまうと改めて取り乱した自分が恥ずかしい。



有明先生はもう一度、涙で濡れた瑞穂の頬を指で優しくぬぐうと「さてと」と言って立ち上がった。


「そろそろ行かなきゃ。仕事途中だったしね」

「あっ・・・ひきとめちゃってごめんなさい」

「いいよ。布津君の口から言われる前に自分で伝えておきたかったから」


立ち上がった先生は少し緩んだネクタイをキュッと締めなおす。

こうやって普段もプライベートと仕事のメリハリをつけているのだろう。


「それじゃあ帰りは気をつけて」

「はい、先生もお仕事頑張ってください」


最後に笑った先生の顔は何だかスッキリしていたように見えた。
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