有明先生と瑞穂さん
「前さ、有馬とかが『瑞穂が誰からか告られたんじゃないのか』って話してたじゃん。
あれって有明のことだったの?」

「よく覚えてるね・・・。そうだよ。
言えるわけないじゃん」

「そりゃそーだな。
特に有馬が知ったらどうなるだろうな・・・」

「ははは・・・・・・・・・」


とてもじゃないが、絶対言えない。



きっと布津は、有明先生とのことでもっと瑞穂から聞き出したいのだろう。

そんな雰囲気が伝わってくるのに布津はそれ以上何も聞いてこなかった。


夕方になってもまだ沈まない日がコンクリートを照り付けて暑かった。


「・・・あちーな、アイス食いてぇ」


布津はシャツをバタバタと扇がせた。



「・・・アイツ、俺のが優位だって言ってたクセに、自分の方が全然いいじゃんか」


そっぽを向いて不満げにそんな独り言をもらす。

答えるすべを知らない瑞穂は聞こえないふりをした。



と、ふいに後ろから腕を勢いよく引かれて立ち止まる。


「!」


黙ってうつむいたまま歩いていたので気づかなかったが布津が立ち止まっていた。




駅はもう目の前だというのに。
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