有明先生と瑞穂さん
そんなことがあってるなんて知らなかった。

布津がそういうことを考えていたなんて知らなかった。


布津がそういうことを考える人間だったなんて知らなかった・・・。



恥ずかしさとかそういう気持ちより申し訳なさでいっぱいになった。



画面では全ての困難を乗り越えたふたりが永遠の愛を誓い合う。



布津もきっとこんなことを望んでいたのだろうか。



女優が彼から甘ったるい愛の言葉を囁かれ、感動して涙をこぼす。


布津も私にこうやって気づいてほしかったのだろうか。




「み~ずほ~?」


反応しない瑞穂を不思議に思ったのか、はじめは照れていた布津だったが心配して顔を覗き込んだ。


「あっ・・・ごめ・・・・・・」


うまく言葉にならない。


「えっ、もしかして寝てた?」


ははは、と布津が笑ってごまかすのを弱く首を振って答えるしかできなかった。



そんな瑞穂を見て、もう一度布津は瑞穂の手に自分の手を重ねた。

今度はゆっくり、優しく。


ぎゅうっと握る手の大きさは昔と違う。



昔はしょっちゅう手を繋いだね。


そしてしょっちゅうクラスの同級生からそれをからかわれてた。




「だから今は、これだけでもスゲー幸せ」



聞いたことのないような優しい声でそう言った。



布津だけど、まるで布津じゃないみたい。



初めて見る彼の一面。


こんなにずっと一緒にいたのに、全然知らなかった。
< 542 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop