有明先生と瑞穂さん
布津の手が心地よいまま映画が終わり、エンディングと共にスタッフロールが流れた。


映画なんて、ほとんど見てなかった。


ちらほらといた客も席を立ち上がり次々に館内を後にする。



「俺らも出よっか」


布津がそう言って初めて
名残惜しさを感じている自分に気づいた。


布津もそう感じているのか手を繋いだまま席を立つ。


それでも明るい人前で手を繋いでいるのはなんだか恥ずかしくてゆっくりと引っ込めた。



映画館を出て外の明るさに目をくらませながら布津のうしろを歩いていく。



大きな交差点の横断歩道で止まるまで一言も会話はなかった。



「なあ」


突然口を開く布津にドキリと肩が動く。


そっと隣を見ると、見せたことのない真面目な顔をした布津がじっと見ていた。


こんな布津の顔を見るのも

初めてだ。
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