有明先生と瑞穂さん



楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕方―――




「・・・・っい、痛い・・・・・・」




疲れを通り越した言葉だ。


どうして水中というものはこうも疲れるのだろう。

このまま眠ってしまいたい。


そして体も本当に痛い。

あんなに日焼け止めをしっかり塗ったのに、すでに体中がヒリヒリする。


(顔も焼けてる・・・)


鏡に映るみっともない姿に肩を落とした。



「瑞穂ちゃん行くよー」

「あっ、はあーい!」


着替えの終わった瑞穂と国見が外に出ると、すでに着替え終わった有明先生と加津佐が待つ。


「お待たせしました」

「じゃあ旅館に戻ろうか」


遊びつかれて見る夕方の海は少し暗く、まだ遊ぶ人が残っているのに物悲しさを感じさせる。



旅館までは歩いて遠くない。

それなのに来た時と比べてひどく遠く感じ、足が重かった。



「晴ちゃーん、見てみ!こいつ!
肌白くて焼けないから真っ赤!」

そう言いながら加津佐が有明の服をめくりあげて見せた。


「やめろって・・・」


有明先生も疲れているのかその抵抗も弱々しい。


(ほんとだ・・・羨ましい・・・)


国見も白いが有明も同じように白い。

当事者達は嫌なようだが正直焼けないなんて羨ましいし、赤くなっているのもちょっとかわいい。

国見は日焼け自体あまり気にしていないようなのだが・・・。


(それにしても先生すごいなあ・・・)


有明先生本人は何やら考え事ばかりしているようで気づいていなかったが、通り過ぎる女の子達はよく有明先生を見ては振返った。


(まあ、その後に隣にいた私を見て『なんでこの子が?!』って顔してたんだけどね・・・)


有明先生の隣が国見だと『納得』という顔をするのに・・・。


仕方のないことだが虚しい。



「・・・加津佐さんはいつもこんな思いをしてたんですね」


「えっ?!何?!突然何?!」


「・・・・・・いえ、なんでもないです」
< 561 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop