有明先生と瑞穂さん
「失礼しまーす!」

元気な有馬の声が響く。


「どうぞ。
あれ?有馬さん一人?」

「ハイ!
ちょっと他のお部屋でトラブルがあっちゃって、そっちにまわってるんです。
人手が足りないんですよぉ~」

「大変だね…」

布団を3回にわけて一人で運び、綺麗に敷いていく。

なるべく早く終わるようにと有明が手伝うと
「私の仕事なんで!」
といい笑顔でその手を静止した。


「今日はお友達と旅行なんですか?」

「そうだよ」

「先生のお友達ってどんな人達なのかなぁ~。
ウチ見てみたかったなー!」

どうやら本当に全く目に入ってなかったらしい。

「・・・普通の友達だよ」

加津佐との関わりがバレるのは面倒だが、今は早く帰ってきてほしかった。


「ここのバイト、マジしんどいけど有明先生に会えて超幸せー!
これ運命じゃないかって思うんですけどー」

「・・・・・・・・・」

このパターンはヤバい。



有馬は布団を敷いてしまうのは早かった。
敷き終わった後もモジモジと服のすそをつまんで何か言っている。

「あのー・・・
ウチ今日の仕事12時には終わると思うんですけどォー・・・
そのー・・・
よかったらこの後二人で海とか眺めに行ったりィー・・・」


不可抗力とは言え、こんな現場に居合わせていいのだろうか。

瑞穂は必死に気配を消しながら有馬の行動に照れていた。


「・・・・・・ごめんね、俺運転手だから早く寝ないといけないんだ」

「・・・・・・・・!!
そっ・・・そーですか・・・」

姿は見えないが一気に声のトーンが落ちる。

有明先生の気持ちはわかるのだが、自分の友達がこうもわかりやすく落ち込むとすごくかわいそうな気持ちになってくる。
< 581 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop