有明先生と瑞穂さん
瑞穂が出て行った部屋で加津佐がぼそりと言った。



「なーに考えてんのー?」

「えーー?べっつにぃ~?」

「・・・・・・」


少し間を置いたあと国見の方に振向く。




「・・・・・・もしかして・・・
俺と二人っきりになりたかった?」


布団から顔半分だけしか出ていないがすごく幸せそうに顔を緩ませている。



「あはっ!違う違う!
有明にちょっとくらいいい思いさせてあげたかったのよー!」

「・・・・・・なーんだ」

「何やらしーこと考えてんだか」

「冷てぇ・・・俺にも優しさが欲しい」

「あーねむっ。オヤスミー」

「・・・・・・・・・」








旅館の外には小さな庭があって、そこそこ整えられた場所がある。


もう少し早い時間ならライトで照らされていたのだが、さすがにこんな時間だと真っ暗だ。


有明は庭の隅にあるボロボロのベンチに腰掛け熱を冷ましていた。



電気に邪魔されることのない空はいつも見るそれとは違う。



「うわー!星がいっぱい出てる!」



聞きなれた声―――瑞穂だ。



「瑞穂さん?」

「わっ!先生!
そんなとこにいたんですか?
真っ暗だからわかんなかったです」


(じゃあさっきのはでっかい独り言か・・・)

ぷっと笑うと不思議そうな顔をして隣に腰掛けた。
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