有明先生と瑞穂さん
ブルブルと振るえながら膝を抱えたまま瑞穂は答えた。


「有明先生が研修の先生達と部活まわってるらしくて~・・・
一緒に行こうって言うから断ったらぁ~・・・」

半泣きだ。


「断っただけであそこまで怒る~?!」

「ついウッカリ『実は有明先生のこと苦手だ』って言っちゃったのー!」

「うわ・・・何でまたそんなことを」


事情を知る布津は「ブハッ」と噴出す。


「好きでも嫌いでも怒るって、どうしたらいいのよ」

「それに本気で殴ることないじゃん~」

涙声のまま瑞穂は後頭部をさすった。
すでに一発やられていたらしい。



「ほらもう鬼は去ったから早く帰ったがいいよ。
一緒に鞄取りに行ってあげるから」

もう不機嫌でない深江はいつもの優しい深江に戻っていた。

(女ってほんとにワケわかんねー)


半泣きのまま瑞穂は深江の手を握る。


「い、い、一緒に帰・・・」

「わかったわよ~。帰るからー!」


布津も昔はこの手を使われると自分が折れるしかなかった。
どうやら深江にも有効らしい。

深江の返事に瑞穂はひとつ大きく頷いた。



「でも・・・布津君は・・・」

(えっ、俺?!)


深江なりに気を遣ったのだろうが少し気まずい・・・。
< 731 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop