有明先生と瑞穂さん
「マルかバツでいいんですよ。
あとで答え合わせするって言われてましたから」

「あの、そ、そうなんですけど・・・これは合ってるのかよくわからなくて」

「えっ、うーん・・・」

「貸して!」


有明の手から口之津が答案を抜き取ると、小浜が「あっ」という声を上げた。

構わずに答案に目を通す。

「公式を少し間違って覚えてる。
回答は偶然一緒になったみたいだがバツですね。
こんなんもわからないなんて高校で何やってたんすか?」

嫌味ったらしく言ってやれば小浜はむっと口を尖らせる。
しかし有明は違った。


「すごいですね。
口之津先生はいらっしゃる前からすごく成績がいいと聞いてたんですが、ちょっと見ただけで解いてしまうなんて。
尊敬します」


散々敵意むき出しにしている相手にも笑って見せた。


「す、すみません私・・・」

「いえ、僕もこういうの苦手ですし、小浜先生が落ち込むことはないですよ」


有明が小浜にも笑いかけると小浜は少しだけ頬を染めた。


(クソっ・・・!)



二人して鼻っ柱へし折ってやろうと思っていたのに――!



口之津が仕掛ける挑発は全てうまくかわしてしまう。
それなのに口之津自身も落とさない。
完璧な返しばかり見せる有明に口之津は更に敵対心が湧いた。
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