有明先生と瑞穂さん
「いえ・・・気にしてませんから」


有明はそれとなく言葉で距離を置くが小浜は引き下がらなかった。


「有明先輩は覚えてなかったかもしれませんけど、私本当に嬉しかったんです。
またこうしてお会いすることができて・・・」


そう言って小浜は顔を上げて有明の目を見た。
今度は有明が目をそらす。


――正直、これ以上こんな話はしたくなかった。


小浜に対して自分の気持ちを重ねてしまって戸惑うところはある。

しかしそれより、小浜に興味の無い有明にはただの公私混合でしかない。

それが少しだけ有明を不快にさせた。



(いや・・・違うな)


(教師の俺が、生徒を好きになって)


(公私混合してるのは自分だ――)



目の前の小浜と自分自身を重ねてしまっている。

それがきっとイライラの原因だ。




(同じ教師同士ならこうやって気持ちを伝えることは、問題なんてないのに・・・)


小浜が自分に思いを吐き出す。

何を話してのかなんてもう聞いてはいなかった。


恥ずかしそうに過去を語ったり、今の気持ちを語ったりするその唇が恨めしい。



(俺は彼女が『生徒』だから好きなわけじゃないのに)
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