有明先生と瑞穂さん
瑞穂の震える手に気付いた有明が言う。


「・・・俺そんなに怖いかな。
怒ってるわけじゃないんだ」

「・・・・・・ち、ちが、」


”違います”

そう言いたいのに、言葉が出てこない。



「ただ理由を知りたいんだ。
俺何かしたかな?
自分じゃどんなに考えても全然わからなくて・・・
だから俺に何かあるのなら――」

「せっ・・・!」


思わず大きい声が出てしまい、慌ててトーンを落とす。


「先生は、何も悪くないんです」



『ごめんなさい』と呟くと有明の顔が歪んだ。




有明は瑞穂の髪にそっと顔を近づけた。

本棚の方を向いたままの瑞穂にも、耳の後ろの方に有明先生の息がかかり、二人の間にほとんど距離がないこと理解する。



「俺、もう我慢の限界――」

「・・・・・・!!」




直接耳に響くその切なげな声に瑞穂の体温が一気に上昇する。



「・・・ぁっ、あり・・・・・・」







「愛野先生!!」


「!!」
「!!」


その時大きな声と共に図書室のドアが勢いよく開けられた。
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