有明先生と瑞穂さん
「先生何が好き?!食べたいのあげるから!」

「結のも結のも~!」

「・・・・・・」


楽しそうな二人とは対照的に瑞穂は顔を上げることができず、ひたすら自分の弁当だけを見つめてもくもくと食事を続ける。

ハタから見れば一人だけ、えらく無愛想に映るかもしれない。


「いいんですか?そうですね・・・」


荷物を持ったままの有明先生は弁当を覗き込んだ。





「じゃあそのミートボールが欲しいな」



「え」



視線が瑞穂のフォークに集まる。


(・・・・・・って、)



瑞穂がまさに口を開けて食べようとしていたもの、それがミートボール。


思わず慌てて有馬と深江の弁当箱を確認するが、持っているのは自分だけだ。


有明先生はいつもの優しい顔で笑い、有馬と深江は嫉妬心丸出しの表情で瑞穂を見ている。



「え・・・あの・・・」

「あ げ な い の ?」

「!!」


有馬の声が怖い。
どうすることがが正解なのかわからない・・・。


「ど、どうぞ!」


有馬の気迫に押されフォークをそのまま先生に差し出してしまった。


「いただきます」


無邪気に笑っているはずの先生の顔は、瑞穂からは悪巧みを考えているようにしか見えない。


(って、ちょちょちょ・・・!)

先生が顔を近づける。


「え、え、きゃっ」


隣で深江が小さく叫んであわただしくバッグを漁った。
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