有明先生と瑞穂さん
有明はさらに力を込めたが――、限界だ。
これ以上は速く走れない。

それなのに布津はさらに速くなり、とうとう一歩

有明の前に足を踏み出した。



「ッキャーーーー!!有明先生ガンバレーーーー!!」


有馬の絶叫が聞こえる。



(・・・・・・くっ)



――もう駄目だ


そう思ったときだった。



ビンッ


「!!!

ふぐぇっ?!」


「?!」


斜め前の布津が何かにつまづき盛大に転んだ。


有明はそれを避けつつもすでに目の前にいた教師にバトンを渡す。


「うわっ!!馬鹿布津ーーー!」


隣では瑞穂が慌てて駆け寄り転がるバトンを拾い上げ、素早く走り出した。


テントからはどっと笑いが湧き上がる。



息を整え布津を見ると、蛙のように地べたに転がっている。
どうやら長いズボンの裾を踏みつけてしまったらしい。



「・・・・・・大丈夫?」

「恥ずかしくて起きあがれない・・・」


蛙のまま布津はゆっくりとした口調でそう言った。
< 809 / 1,252 >

この作品をシェア

pagetop