有明先生と瑞穂さん
思わぬハプニングが目の前でおきてしまい注目を集めた瑞穂はそれから逃げ切るように走り抜けた。

布津が転んだせいでまた3着まで引き離され、その距離は先程よりも広がっている。

有明先生人気と布津の学ランパフォーマンス、そして転んでしまうハプニングにより皆の視線はだいぶそれた。


有馬達は有明先生に黄色い声でエールを送り、口之津は布津の勢いある転び方が気に入ったらしく布津の背中をバシバシ叩きながら爆笑している。

観客用テントから一瞬見えた加津佐達も有明先生からまだ視線は外されていない。


おかげで瑞穂の緊張は一気にとけて、重りでも外したかのように身が軽くなった。


(ラッキー!)


今なら恥ずかしくない。

この位置なら転ばない限り、よっぽど目立つ順位にもならない。




瑞穂は軽くなった足を前へ、前へと進めた。



走るのが好きだった昔を思い出す。




瑞穂の目には今、コースも他の選手も見えていない。
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