有明先生と瑞穂さん
「はい!」

バシッ



瑞穂がはっとした時には既に次の選手が手を構え、瑞穂は反射的にバトンを渡した。


(やばいやばい、一瞬頭飛んでた)


そう反省した瞬間、皆がどっと沸いた。


「え?え?」



何が起こったのだろうと慌ててあたりを見回すと、先程まで前を走っていたはずの二人が今頃遅れて瑞穂の隣を駆け抜け次の選手にバトンを渡す。

瑞穂は慌ててコースから出て邪魔にならない位置へ移動した。



「晴子すごーーーい!!」
「晴ちゃーーーん!!」


自分のクラスのテントから有馬達の声。


「やるじゃねえか晴!!」


振向いた瞬間後ろから勢いよく口之津が肩を抱いてきた。


「ぐえっ!!何ですか?!」

「何じゃねーよ!何だあの速さ!
何であの距離で軽々二人抜いて、差つけちまうんだよ!」

「抜いた?!私が?!」

「何言ってんだお前」


瑞穂はもう一度周りを見渡すと、遠くの方で加津佐と国見もすごく驚いた顔をして瑞穂に歓声を上げている。


ようやく、いつの間にか自分が1着でバトンを渡したことを理解した。


「う、うわ・・・全然気付かなかった」

「なに走りながらトリップしてんだお前。きめぇ」

「・・・・・・」


見られていなかったはずの注目が瑞穂に集められている。

今になって恥ずかしい。
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