有明先生と瑞穂さん
口之津の機嫌がまた悪くなり、瑞穂は慌てて話を中断した。


「あ!ほ、ほら!あそこにいるの!!
あれが言ってた子ですよ!」


そう言うと口之津はすぐにまた前に視線を戻す。





「・・・なんか今日、有馬のヤツ変じゃねーか?」


布津が小さな声で呟く。

確かに変だ。

――いや、いくらソリが合わないからといっても初めて会った時から有馬の口之津に対する態度はどこかおかしい。




「千々石さん!!」

「瑞穂先輩・・・」


相変わらずうつむき加減で重い髪で顔を隠し、眼鏡をかけた千々石がオドオドと振向いた。


「ごめんね、付き合わせちゃって」

「いいえ・・・」

「オイ晴、コイツがか・・・?」


あまりにも想像と違いすぎる姿に口之津は明らかに落胆した態度を見せた。


「まあ見ててくださいって。
ちょっと千々石さんごめんね!」

「え?!ちょっと先輩?!キャッ・・・!」


説明するよりも見せた方が早い。


瑞穂は千々石の顔にかかった髪を思いっきり手グシで後ろにかきあげ、眼鏡を奪い取った。


「ええっ?!ちょっと・・・」


「・・・・・・!!」

「えっ?!」


突然手荒なことをされあっけにとられる千々石をよそにそれを見た人間は驚いた。



「えぇっ?!すごい・・・なんだっけ、あの、モデルの子に似てる!」

「すげえー!!こんな漫画みたいなことあんのかよ!」





「・・・・・・・・・」



口之津は目を見開きながらも神妙な顔をして固まっていた。
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