有明先生と瑞穂さん
「・・・・・・違う」
一言ぽつりと呟くとひどく残念そうにうなだれた。
「悪ィ・・・。
すげえ美人だとは思うけど、俺が探してる女じゃねえ・・・」
落胆する姿は同情してしまうほどだ。
「あ・・・やっぱりそうですか」
仕方がない。
千々石が、面識が無いと言っていたのは本当だった。
それに千々石の性格ではどう考えても夜中に出歩いたり、知らない人と仲良く話したりする子ではない。
日頃見せる大人しい性格は作ったものかとも思ったが、それは出来すぎた話だったのだ。
「いきなりごめんね」
眼鏡を返すと千々石は赤くなりながら慌ててそれをかけなおし、髪で顔を隠した。
「ははっ!折角美人なんだからもっと自信持てばいいのに~」
布津がマジマジと眼鏡の奥を覗き込むと千々石はさらに恥ずかしそうに顔を伏せる。
口之津の探している人ではないとわかったが、よっぽど驚いたのか布津と深江はしばらく千々石に構っていた。
「口之津先生・・・・・・」
あまりにも落ち込む口之津を見ていると、期待をさせてしまったことに責任を感じた瑞穂は胸が痛くなり近寄った。
瑞穂が口之津の肩に手を置こうとした、その時だ。
「・・・・・・ふふっ」
口之津の後ろで有馬が小さく肩を震わせて笑った。